笠置寺

笠置寺の創建不詳であるが、『笠置寺縁起』には白鳳十一年（682）、大海人皇子の創建とある。
または天智天皇の御子である大友皇子が創建したともいわれているが、いずれかははっきりしない。
笠置山はすでに弥生時代頃から巨石が信仰の対象となっていた。
実際に寺観が整えられたのは1300年前の奈良時代、東大寺の良弁僧正とその弟子である実忠和尚によって笠置山の巨岩に磨崖仏が造られ、それらを中心に堂宇も建立され、笠置山全体が一大修験行場となった。
平安時代の永承七年（1052）以後、世の末法思想の流行とともに笠置寺の弥勒磨崖仏は天人彫刻の仏として強く信仰を集めた。
鎌倉時代の建久二年（1191）興福寺の貞慶上人（通称『解脱上人』、藤原信西の孫にあたる）が南都の宗教界の世俗化に疑問を呈し、北に遠く離れた笠置寺の住持となり、一層の全盛を極めた。全盛期の笠置寺の姿は鎌倉時代に描かれた『笠置曼荼羅図』（大和文華館蔵）によって知ることができる。
鎌倉時代末期の元弘元年（1331）、後醍醐天皇は鎌倉幕府打倒を目指し挙兵、笠置山を要塞化し籠城したが、約1ヶ月の攻防の末に落城、笠置山は全山焼亡してしまった。
以後、室町時代に復興をしたものの徐々に衰微し、江戸中期には狐狸の住む有様となる程に荒廃。遂に明治初期に無住となった。
明治九年（1876）丈英和尚が笠置寺の復興に尽くし、20年かけて今日の山容となった。