愛染院

　北浦を一望に見渡すここ水原の地に長い歴史を刻んで立つこの寺は、真言宗豊山派に属し、水原の観音様（安産子育の御仏）として近郷近在の女性の信仰を集めている古刹である。
　寺伝では、天喜五年（一〇五七）、陸奥征討（前九年の役）に出陣の途中、この郷で難風に遭った源氏の将軍は八幡太郎義家公はやむなく滞陣したが、その夜、不思議な仏夢により深く感ずるところがあって、後冷泉天皇から守護仏として賜った如意輪観世音菩薩に深く帰依し、七日七夜の水行に身を清め行軍一隊の武運を祈願したところ、満願の日に北浦湖上が穏やかになったため、衆生済度の根本の地として草庵を建立し、庵主に円通閣主を招いたと伝えられている。
　その後、本堂が建立され、義家公の守護仏を胎内仏とした如意輪観世音菩薩を安置している。
　元禄七年（一六九四）から堂宇の再建が行われ、宥範和尚を中興開山として迎えた。
　宝永元年（一七〇四）には麻生領主新庄直隆から再建記念の愛染明王像が寄進され、以後麻生領主の祈願所となった。
　　（中興二十六世住職　平林　智善）(後略)
　令和四年三月
(境内・潮来市教育委員会案内板より)