正尊寺

創建年代は不詳だが、天台宗横蔵寺（揖斐川町）の末寺として創建された。
室町時代に入ると、横蔵寺の衰退とともに無住と化し廃寺同然の状態になっていたと伝わる。当時は現在の中島の地から北西に1kmほど離れた向野の南にあった。
文明5年（1473年）、真宗の信心が篤かった曽井村・中島村の住人（青木氏・高橋氏・早川氏、もと性顯寺門徒）が吉崎へ出向き、弟子一人を遣わしてほしいと願い出た。こうして吉崎御坊より蓮如上人に遣わされた了光坊が、浄土真宗に改宗したうえで近隣門徒（現在の本巣町・大野町・谷汲村・糸貫町・網代西郷）とともに浄土真宗の道場として再興した。了光坊（嚴城院了光）は幼名を吉丸主計、本名を杉山光珍といい、藤原魚名の五男・藤成および藤原秀郷の子孫で、小山を本拠とした。了光は真宗に帰依して大内の官を辞し、吉崎で弟子となっていた。
享禄3年（1530年）6月3日、根尾川の大洪水で堂宇がすべて流失した（このときに薮川すなわち現在の根尾川ができた）。2世・安住院道珍は蓮如上人下賜の六字名号、恵心僧都作阿弥陀如来像、紺紙金泥大般若経1巻のみを持ち出すのがやっとであったという。元あった地が河床となったことから、中島村に移すことにした。中島村は美濃守護・土岐氏の領地であったことから門徒一同で土岐氏に願い出たところ、時の守護・頼芸は現在地に寺領と寺内免許を与えた。
永禄7年9月（1564年）、織田信長による焼き討ちにあい、堂宇や多くの宝物（蓮如上人からの手紙など）を焼失した。こののち慶長のころまで庫裡の一角を本堂とし、慶長・元和あたりに藁屋根の本堂が庫裡南に建てられた。
文政5年（1822年）、長年の夢であった本堂再建の目処がたったことから、13世・大乗院義空の主導で募金が開始され、天保11年に仮入仏式を執り行った。この後10年ほど経ってようやく完成を見た。この本堂が現本堂で、欄間は名古屋を中心に活躍した瀬川治助の手による彫刻。