別府観音堂

延暦年間（782年 - 805年）、奥州（現・福島県会津）の豪族・大口の大領という者が、京都平安において豊然上人の作という十一面観世音菩薩（甲乙二体）の尊像を勧請し会津に安置しようとして京都を発ったが、近江路（滋賀県）を経て美濃に入り、杭瀬川の東・大野の郷・川崎の伊久良河の宮の辺り（現・瑞穂市森）につくと不思議な霊告を感じたため、一体を糸貫川の支流・管瀬川の上流に安置した。これが谷汲山華厳寺である。
別の一体は当初の通り会津に安置しようとしたが、大領が病気になって美濃国で没したため、その菩薩像は川崎の森の地に留まった。
源平合戦が起きると、岡部六弥太忠澄という者が源氏の範頼・義経方の武将として一ノ谷の戦いにおいて平家の大将・薩摩守忠度を討ち取るという手柄を立て、武功によって美濃国の領主となった。忠澄の母親は近隣の豪族・別府氏の出であり、その母親の病気祈願、二世安楽、息災延命、五穀成就を願い、十一面観世音菩薩を川崎の地よりこの別府の地に遷し、堂塔を建立し安置した。
かつては別府地区にあった唯願寺に安置されていたが、寺が明治6年（1873年）に廃寺となったため、堂が建てられた。
本尊は谷汲山華厳寺の観音像と同作・等身で、昔から御兄弟の霊像であると言い伝えられている。