唯念寺

天平3年（731年）に出された聖武天皇の勅にしたがって行基によって法相宗の寺院として創建された。行基は四十八の寺院を建立したのちにこの寺を四十九番目の寺院として創建したため、「兜率山四十九院」の名とした。このとき天皇より「芙蓉」の二字を賜った。さらには行基自らが阿弥陀如来立像および弥勒菩薩塑像を造り、本尊とした。
行基は四十九院を作ったのち、荒神山に「荒神山奥山寺」を奥の院として創建した。のちに奥山寺は明治期の神仏分離令によって寺としては廃絶し、荒神山神社となった。
当初は法相宗であったが、のちに天台宗を兼ねた。永正3年（1506年）、26世・巧順のときに本願寺に帰依して浄土真宗となり、実如から照光坊の名を賜って「兜率山照光坊」とした。天正8年（1580年）、先代27世・巧空が織田信長による石山本願寺攻めのとき救援に動いた功から、28世巧寂が教如上人より「唯念寺」の寺号を授けられ、唯念寺に改称した。
東隣に音通寺（恵林寺の北にあった）、恵林寺を塔頭として持っていたが、現在は独立している。音通寺は昭和10年に廃寺となって畑地となっている。
建築物としては、庫裏裏北側の芙蓉閣という書院が最も古い。かつて3階であったが、老朽化から最下階のみ補修して上2階は取り壊された。また、その北西には行基作庭とされる「行基の庭」がある。