泉澤寺

上小田中村でも小杉村に境を接している神地にある。かつて世田谷の烏山にあったが、天文19年(1550）吉良頼高の菩提寺としてこの地に移転された。同寺は神地の市という暮の市で有名であった。歴史は古く、天文19年の文書に「上小田中市場より泉沢寺堀際まず寺門前として、諸役・公事・勧進以下一切の課役を免除する」旨の通達を出して、市の繁栄を促している。もともと門前はこのような楽市的な傾向が強かった。江戸時代初頭は、小杉御殿や代官陣屋が設けられるなど、多摩川を控えた政治・交通上の要地でもあり、このため徳川幕府も泉澤寺へ朱印20石を与えている。泉澤寺は西明寺、高願寺とあわせて小杉御殿の守り固めの役割も果たしていた。明治以降は神地の歳の市として1月28日(かつては月おくれの正月であったため、1月が年の暮になる)の市が有名になった。明治の終わりごろ神地の商店街の人が相談し、盛んにしたといわれるが、登戸や川崎、中原街道を下った現在横浜市の勝田・山田の方からも人が来た。売られていたものはざる・かど・くわ・などの農具、日用雑貨、衣類のほか正月用品のしめなわ・羽子板などである。